物語

【第10話:バトン】

平日の昼下がり、妙子さんと真くんと一人の男性がロッジのソファでテーブルを囲んで談笑している。 妙子さんと同い年くらいの眼鏡の男性だ。 「いやあ、久しぶりに近くまできたもんだから。」 「それにしても、忙しいんでしょう、林く […]

【第9話:人生を創る】

カラン、コロン、カラン… 「こんにちは。今日、相談の予約をしています。笹川です。」 「ああ、こんにちは。池川です。どうぞ、中へ。迷わず来れましたか?少し遠かったでしょう。」 相談者は30代の女性で、失恋したのを機に相談に […]

【第8話:手を出さない範囲】

相談者さんの対応を終えた妙子さんがロッジに来ていた。 妙子さんは販売開始になった自分の占いカードを真くんにプレゼントしている。 香苗はこの間のハーブの仕分けがどうにも癖になり、半ばやらせてくれと頼む形でキッチン前のカウン […]

【第7話:病を癒すこと】

「こんにちは、糸ちゃん。久しぶりだね。気分はどう?」 「さいこーだよ。今日もあそんでいっていい?」 「すみません、いつもいつも。」 「大丈夫ですよ。今日は用事がないし、一人でロッジにいてもなんだかね。」 真くんは、糸ちゃ […]

【第6話:空間の香り】

週末のロッジで、キーボードの音が響いている。 真くんが、雑誌に掲載する記事を書いているのだ。 誰もいない昼下がりのロッジで、外から差し込んだ日差しとそれを取り巻く柔らかな空気が、キーボードの音を受け止めている。 カラン、 […]

【第5話:家族のかたち】

カラン、コロン、カラン… 入口のドアベルが音を立てて一人の女性を迎え入れる。 40,50代の女性で、年相応であるが肌はきれいに見える。 わりに色白で、瘦せているとは言えないが小ぎれいにしている。レースのブラウスに柔らかな […]

【第4話:陽子の過去~音の魔法編~】

連弾の勉強会(コンサート)当日、私はまだ完全に自分に自信を持てたわけではなかったが、それでも鈴音との演奏が楽しくて、どうしても両親に聞かせたいと思った。 意を決して迎えた本番。もちろん緊張はしたけれど、鈴音の音が私に寄り […]

【第3話:陽子の過去~電撃編~】

「ね、連弾の組み合わせ発表見た?」 講義室に入ってくるなり、友人の美幸が興奮した様子で話しかけてきた。 「陽子、鈴音ちゃんと組むって!」 私が確認する前に先走って教えてくれた美幸を、恨めしい目で睨みそうになるのをぐっとこ […]

【第2話:それぞれの道】

真くんには、霊感がある。 他の人の目には見えないものが見えたりするらしい。 私と真くんは同級生で昔から一緒にいたけど、私はそのことには気が付かなかった。 真くんも、別にそのことをみんなに言ったりしなかったと思う。 私たち […]

【第1話:幼馴染との再会】

「ね~おかあさ~ん、私の携帯見なかった~?」 香苗はウエストのところでねじれた寝間着と前髪が浮いた妙な寝ぐせで、ベッドの上で布団をかき分けながら尋ねた。 「知らない~、あなた社会人にもなってそんなことばかり言って。なんで […]