週末のロッジで、キーボードの音が響いている。
真くんが、雑誌に掲載する記事を書いているのだ。
誰もいない昼下がりのロッジで、外から差し込んだ日差しとそれを取り巻く柔らかな空気が、キーボードの音を受け止めている。
カラン、コロン、カラン…
「真くん、久しぶり。」
香苗は、真くんがインターネットで販売しているハーブ類の梱包のため、ロッジを訪れた。
乾燥させたハーブからピンセットで不純物を取り除き、同じ重さに軽量して袋詰めする作業だ。
「お久しぶり。お願いしてもいい?」
「うん。」
香苗はもくもくと集中できるこの作業が以外にも気に入っていた。
それにこの作業を手伝うと、真くんはいつも自分で作ったアロマをくれたりするものだから、その点も気に入っていた。
香苗はキッチンのカウンターに座り、道具を自分なりの位置に整え作業を始めた。
真くんが打つキーボードの音と、差し込む太陽の光、木とハーブの香りだけが香苗を包み込んでいた。