カラン、コロン、カラン…
香苗がロッジにある本棚の前で本を読んでいると、ロッジのドアを開けて妙子さんが入ってきた。
手には男物のシャツを持っている。
「はい、これ。あなたがカレーうどんを飛ばしたシャツ。きれいになったわよ~。」
「あ、ありがとう。妙子さん。さすがだよね、やっぱり。」
真くんは、苦笑いを浮かべながら妙子さんにお礼を言っていた。
「あ、香苗ちゃん。この間はありがとうね。プレゼント、選んでくれたんだって?すごく気に入っちゃって、いつも使っているのよ。」
「あ、いえ。喜んでいただけて良かったです。」
香苗は妙子さんにお礼を言われて少し照れ臭かったが、喜んでもらえたみたいで嬉しかった。
「この子と行ったんでしょう?この子、変なものばっかり見るから、大変だったでしょう。」
「あ、ああ~。いや、私も一緒に行けて楽しかったです。」
香苗はとっさにそう答えたが、確かに真くんはインクをつけて書く羽ペンや、中国のさびたコインなど、香苗にはあまり使い道のわからないものばかり見ていた。
「妙子さん、変なこと言わなくていいから。」
真くんは顔をしかめて、受け取ったシャツを広げたり閉じたりしていた。
「ごめんごめん、じゃ、私はこれだけだから。」
妙子さんは真くんにシャツを渡すと、ばいば~いといって、またすぐにロッジの入口の鐘を揺らしながら帰っていった。
「嵐のような人だな。」
真くんはそう言って、妙子さんから受け取ったシャツを二階にもって上がった。
香苗はまた静かになったロッジで読書を続けていた。