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【第15話:洗濯物と差し色】



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香苗がロッジで真くんに話を切り出した。

忙しいのに悪いと思ったが、どうしても頼みたいことがあった。

真くんが回した洗濯機の音だけがグウィーン、グウィーンと響いている。

「あのさ…。」

「うん?どうしたの。」

真くんは新しい商品のサンプルを確かめながら答えた。

「あの…。私の名刺にアドバイスくれないかと思って。」

「名刺?なんで。」

「うまく、作れなかったんだ。なんか味気ないというか。」

香苗は仕事で使う名刺を自分用に作成していたが、どうにも殺風景でバランスもしっくり来ていなかった。

香苗はこの手の作業が得意ではなかったが、勤めている会社ではあまり名刺を使う機会がなく、皆がそれぞれに自分で作成して使用していた。

「自分でも一度つくったんだけど、あまりうまくいかなくて。」

「ふーん、見せて。どんなのにしたいの。」

「えっと。もう少し色を入れたいっていうか、今のままだとちょっと殺風景であまり気に入ってないんだよね。」

「…そう。」

真くんは香苗のお世辞にもよくできているとは言えない名刺を見ながらしばらく考えて答えた。

「色、つけてあげようか?ここに。」

「え…?いいの?」

「うん、構わないよ。」

真くんは、自分の商品の紹介カードや名刺、ロッジの宣伝用ハガキなど、普段から自分で作成していて、この手のことには長けている。

「貸してみ、名刺。」

真くんは一度、自分の商品のサンプル確認の手を止めて、香苗から殺風景名刺を受け取るとパソコンで少し作業して彩りを加え配置を調整した。

真くんが慣れた手つきでプリンタに名刺用の紙をセットし、裁断機でカットし香苗に手渡した。

真くんが手を加えた香苗の名刺は明らかに見やすく目を引くものになっていて、それでいて適度に色も加わっている。

早くこれをもって仕事に行きたい…!そう思わせてくれるような名刺で、香苗の作ったものとは似ても似つかない大満足の仕上がりだった。

「ありがとう真くん!こんなにきれいに、しかも見やすく作ってくれるなんて感激だよ。なんだか私も背筋が伸びる思いだよ。お礼に何か手伝う。」

「いや、いらないいらない。」

真くんは、大丈夫だからこんなことで、と右手を顔の前で左右に振っていたが香苗はやはり何かお返しをしたいと思い自分にできることを探していた。

ちょうどそのタイミングで洗濯機が鳴り終わったので、結局、洗濯を干す手伝いをすることになった。

嫌でなければだけど…と前置きして尋ねたが、真くんは洗濯に関しては香苗に甘えたそうにしていた。

ちょうどロッジにとまって作業をすることが続いて、洗濯物がたまっていたようだった。

結局、香苗が6割干す間に真くんが4割干して、真くんが干したうち半分を香苗が干しなおした。

真くんは「あまりうまく干せない…。」といっていたがその通りだった。

妙子さんの言っていたこともわかるような気がした。

男の子って、こんなものなのかなあ、香苗は不思議に思いながらも嫌な気持ちはしなかった。

その週の初出勤日、香苗は名刺に引っ張られるようにしてうきうきと仕事に出かけた。

まるで香苗の職場での生活にも差し色が入ったように、新鮮な気持ちだった。

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